COLUMN · 2026.05.26

病歴・就労状況等申立書の書き方のコツ

障害年金の申請書類の中で、病歴・就労状況等申立書は申請者自身が作成する唯一の書類です。診断書が医師の視点から病状を記録するものであるのに対し、この申立書は日常生活における困難さを本人の言葉で伝える役割を担っています。当事務所では、この書類の内容が審査結果に少なからず影響を与える可能性があると考えており、丁寧な作成を強くお勧めしています。

1. 病歴・就労状況等申立書とはどのような書類か

病歴・就労状況等申立書は、発病から現在に至るまでの経緯、受診状況、就労状況、そして日常生活の状況を時系列で記載する書類です。日本年金機構の審査担当者は、この申立書と診断書を照らし合わせながら障害の状態を総合的に判断します。

特に重要なのは、診断書の内容と申立書の内容に矛盾が生じないようにするという点です。たとえば、診断書に「日常生活に著しい制限あり」と記載されているにもかかわらず、申立書に「家事全般をこなしている」と書いてしまうと、審査上の整合性が取れなくなる可能性があります。作成前に担当医から診断書の内容を確認できる場合は、可能な範囲で内容を把握しておくことが望ましいでしょう。

2. 発病から現在までの経緯を正確に整理する

申立書の前半部分では、発病日・初診日・各医療機関への受診歴を時系列に沿って記載します。この部分は事実関係を正確に記載することが求められますので、できる限り診察券・領収書・お薬手帳・紹介状の控えなどを参照しながら整理してください。

よくある記載上の課題として、受診していなかった期間(未受診期間)の扱いがあります。未受診期間がある場合は、「経済的な理由で通院できなかった」「症状が落ち着いていると思い受診を中断していた」など、その理由を具体的に記載することが重要です。空白のまま放置すると、審査担当者に誤解を与える可能性があります。

また、複数の医療機関を転院している場合は、それぞれの受診期間と転院の理由についても簡潔に触れておくと、経緯の全体像が伝わりやすくなります。

3. 日常生活への影響を具体的に記述する

申立書の中で審査上の比重が大きいとされるのが、日常生活の状況に関する記載です。「体が動かない」「外出できない」といった抽象的な表現にとどまらず、具体的な状況を言葉にすることが求められます。

たとえば、以下のような観点から日常生活への影響を整理してみてください。

  • 食事の準備や後片付けができるか、誰かの助けが必要か
  • 入浴・洗髪・着替えなどの身の回りのことをどの程度自分でできるか
  • 一人で外出することができるか、交通機関を利用できるか
  • 睡眠が安定しているか、昼夜逆転している時期があるか
  • 他者とのコミュニケーションに支障が出ているか
  • 金銭管理や公的機関への手続きを自分で行えるか

「できない」という事実だけでなく、「なぜできないのか」「できないときにどうしているのか」まで記載すると、障害の実態がより正確に伝わる可能性があります。たとえば「買い物に一人で行けないため、週に2回家族に同行してもらっている」という記載は、困難さと現在の対応状況の両方を伝えることができます。

4. 就労状況の記載で注意すべき点

就労している場合、あるいは過去に就労していた期間がある場合は、その状況を正直かつ詳細に記載する必要があります。ここで気をつけていただきたいのは、就労の事実を隠したり、過小に記載したりすることは絶対に避けるべきだということです。事実と異なる記載は審査において不利に働く可能性があるだけでなく、場合によっては重大な問題につながることがあります。

一方で、就労していたとしても、その実態を正確に伝えることは重要です。たとえば「週3日・1日4時間のパート勤務だったが、職場の配慮により業務内容を大幅に制限してもらっていた」「欠勤が月に10日以上あった」「職場に付き添ってもらわないと通勤できない状態だった」といった情報は、就労していたことと障害の重さが矛盾しないことを示すうえで有効です。

就労していなかった期間については、「求職活動ができなかった理由」や「在宅で療養していた様子」なども記載できると、状況の裏付けになる可能性があります。

5. 記載を避けたほうがよい表現と書き方の注意点

申立書を作成する際に、当事務所がよく見受ける課題のひとつが「良い日」の状態を基準に書いてしまうことです。体調には波があることが多く、調子の良い日を基準に記載すると、実態よりも軽い障害であるという印象を与えてしまう可能性があります。「平均的な状態」あるいは「悪い日の状態」を念頭に置きながら記載することをお勧めします。

また、以下のような表現は内容が曖昧になりやすいため、できるだけ具体的な言葉に置き換えることが望ましいです。

  • 「なんとなく体がつらい」→「倦怠感が強く、午前中はほとんどベッドから起き上がれない日が週に4〜5日ある」
  • 「気分が落ち込む」→「気分の落ち込みが続き、入浴を1週間以上できないことがある」
  • 「人と話せない」→「電話対応に強い不安を感じ、家族以外との会話を避けている」

数字や頻度を盛り込むことで、状況の具体性が増します。「週に何日」「1回あたり何分程度」「ひと月に何回」といった情報は、審査担当者が状況を把握するうえで参考になります。

6. 作成後に確認しておきたいチェックポイント

申立書が完成したら、提出前に以下の点を改めて確認することをお勧めします。

  • 発病日・初診日の記載が、他の書類(受診状況等証明書など)と一致しているか
  • 診断書の記載内容と申立書の内容に大きな齟齬がないか
  • 未受診期間がある場合、その理由が記載されているか
  • 日常生活の状況が「良い日」ではなく「平均的・悪い日」の状態で記載されているか
  • 就労状況について事実に基づいた記載ができているか
  • 記載内容が第三者にも伝わる具体的な表現になっているか

病歴・就労状況等申立書は、審査の場において申請者の声を代弁する書類です。診断書だけでは伝えきれない生活の実態を正確に記載することが、適正な審査につながる可能性があります。書き方に不安がある場合や、どの程度の内容を記載すればよいか判断が難しい場合は、障害年金を専門とする社会保険労務士に相談されることも選択肢のひとつです。

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※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。

執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)

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