COLUMN · 2026.05.12

初診日のカルテがない・廃院の場合の対処法

障害年金の請求において、初診日の証明は審査の根幹を成す要素です。しかし、受診から長い年月が経過している場合や、医療機関がすでに閉院している場合には、カルテそのものが存在しないというケースが少なくありません。当事務所にご相談いただく方の中にも、「カルテがないと言われた」「病院自体がなくなっている」という理由で請求を断念しかけていた方が多くいらっしゃいます。初診日の証明が困難な状況であっても、代替手段を丁寧に積み上げることで請求できる可能性があります。本稿では、その具体的な対処法を解説します。

1. なぜ初診日の証明がこれほど重要なのか

障害年金を受給するためには、大きく三つの要件を満たす必要があります。①初診日要件(初診日時点で公的年金に加入していること)、②保険料納付要件(一定期間の保険料を納付または免除されていること)、③障害状態要件(定められた障害の程度に該当すること)です。

このうち①と②は、初診日がいつであるかによってまったく判断が変わります。初診日が国民年金加入期間中か厚生年金加入期間中かで受給できる年金の種類が異なりますし、保険料の納付状況も初診日を基準に計算されます。初診日が1日ずれるだけで受給の可否に影響することもあるため、日本年金機構はこの点を特に厳格に確認します。

2. カルテの法定保存期間と廃棄が起こる背景

医療機関がカルテ(診療録)を保存すべき期間は、医師法第24条により最終の診療から5年間と定められています。この期間を過ぎると、医療機関は法的な保存義務を負わないため、スペースやコスト管理の観点から廃棄されることがあります。

また、医療機関が廃院した場合も、カルテが引き継がれずに消失してしまうことがあります。特に、数十年前に一度だけ受診したような「初診の医療機関」は、その後に転院しているケースが多く、患者側がその存在をそもそも把握していないこともあります。こうした事情から、「受診状況等証明書が取得できない」という状況は決して例外的ではなく、実務上よく直面する問題です。

3. まず試みるべき「受診状況等証明書」の代替的な入手経路

カルテが廃棄されている、あるいは廃院しているからといって、すぐに諦める必要はありません。まずは以下の経路を一つずつ確認することをお勧めします。

  • 廃院した医療機関の後継・承継先への確認:廃院後に別の医師が診療所を引き継いでいる場合や、病院が合併・移転している場合には、カルテが引き継がれていることがあります。
  • 都道府県医師会や地元の保健所への照会:廃院時にカルテを預かる制度や慣行がある地域もあります。
  • 労災・健康保険組合の給付記録:初診当時に労災申請や傷病手当金の請求をしていた場合、給付記録に受診日が記録されていることがあります。
  • お薬手帳・処方箋の控え:調剤薬局に処方記録が残っている場合があります。薬局のシステムには比較的長期のデータが保存されているケースもあります。
  • 入院記録や診断書の控え:初診時に入院していた場合、当時の入院記録が別途保管されていることがあります。

これらを丹念に確認することで、直接のカルテがなくても受診の事実を裏付ける書類が見つかる可能性があります。

4. 「受診状況等証明書が添付できない申立書」と第三者証明の活用

上記の手段を尽くしてもなお証明書類が得られない場合には、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し、日本年金機構に提出することになります。この申立書は、請求者本人が初診の状況を自ら説明するものですが、申立書単独では証明力が弱く、補強のための客観的な資料が必要です。

その中心的な手段が第三者証明です。第三者証明とは、請求者本人や配偶者・直系血族・兄弟姉妹以外の第三者(友人、知人、元職場の同僚など)が、初診当時の受診事実や病状について申し立てるものです。2名以上の第三者から証明を得ることが望ましいとされており、それぞれが独立して記憶していることが重要です。

第三者証明として認められやすい内容の例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 初診当時に本人から受診していると聞いた、または病院へ付き添った
  • 病気や怪我の状況を直接見聞きしていた
  • 当時の職場での様子や欠勤状況を知っている

なお、第三者証明はあくまで「補強資料」であり、これだけで審査が通るとは限りません。他の客観的証拠と組み合わせて総合的に判断されるものです。

5. 第三者証明以外の補強資料として有効なもの

第三者証明とあわせて提出することで証明力を高められる資料には、以下のようなものがあります。

  • 身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳:手帳の申請時に添付された診断書に初診日が記載されていることがあります。
  • 自立支援医療の受給者証・申請記録:申請時の医療機関名や受診開始時期が確認できる場合があります。
  • 当時の日記・手帳・家計簿:受診日や受診した医療機関名が記録されていれば、補強資料として添付できます。
  • 生命保険・損害保険の給付記録:保険金請求時に診断書を提出している場合、保険会社に問い合わせることで記録が確認できる場合があります。
  • 学校や職場の記録:学校の通知表や職場の出勤記録に病欠の事実が残っていることがあります。

これらを一つひとつ丁寧に収集・整理し、一連の流れとして提示することが審査において重要です。

6. 証明が困難なケースこそ専門家への相談が有効な理由

初診日の証明が困難な案件は、手続きの難易度が高く、どの書類をどの順番で収集・提出するかという戦略が結果を左右することがあります。当事務所では、こうした複雑なケースにおいても、利用可能な資料を洗い出すヒアリングから始め、申立書や添付資料の組み立てまでを一貫してサポートしています。

「カルテがないから無理だ」と思い込んでいた方が、当事務所に相談した後に請求に至れた事例も存在します。もちろん、すべてのケースで同様の結果が保証されるわけではありませんが、諦める前に専門家の視点で可能性を検討することには意味があります。

初診日の証明に不安を感じている方、カルテの廃棄や廃院でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。状況をお伺いした上で、取り得る手段について丁寧にご説明します。

FREE CONSULTATION

障害年金の申請・審査請求のご相談は当事務所へ

初回相談は無料です。完全成功報酬制で、全国からご相談を承っております。


※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。

執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)

電話相談 LINE相談 メール