COLUMN · 2026.06.13

就労と障害年金の関係|働いていても受給できるケース

「仕事をしているから障害年金は無理だ」と最初から諦めてしまっている方が、実は少なくありません。当事務所に相談にいらっしゃる方の中にも、そのような思い込みから長年受給の機会を逃してきたケースがあります。就労と障害年金の関係は、正確に理解しておくことが非常に重要です。この記事では、働きながらでも障害年金を受給できる可能性があることについて、具体的なポイントを整理してお伝えします。

1. 「就労=不支給」ではない——制度の基本的な考え方

障害年金の支給要否は、基本的に「日常生活や労働に支障をきたしている障害の状態が、認定基準を満たしているかどうか」によって判断されます。就労しているかどうかは、その判断材料の一つにはなりますが、それだけで不支給が決まるわけではありません。

日本年金機構の認定基準においても、就労の有無は「参考となる事項」として位置づけられており、就労していること自体が受給を妨げる絶対条件とはなっていません。実際に、フルタイムで働きながら障害年金を受給している方は一定数いらっしゃいます。

ただし、就労の実態は審査において一定の影響を及ぼすことがあります。「働けているなら生活に支障はないのではないか」という判断につながりやすいため、どのような条件・配慮のもとで働いているかを丁寧に示すことが重要になります。

2. 障害者雇用・職場の配慮が鍵になる

就労していても受給が認められやすいのは、障害者雇用枠での就労や、職場から特別な配慮を受けながら働いているケースです。こうした場合、一般の労働者と同等の労働能力があるとは評価されにくく、障害の状態が適切に反映される可能性があります。

具体的に配慮の内容として挙げられるものには、以下のようなものがあります。

  • 勤務時間の短縮や休憩の頻繁な取得
  • 業務内容の大幅な限定・簡略化
  • 通院や体調不良による欠勤・遅刻・早退への許容
  • 上司や同僚による日常的なサポート・声かけ
  • 在宅勤務・フレックス制など柔軟な勤務形態の適用

このような配慮があってはじめて就労が維持できているという実態は、診断書や申立書を通じて適切に表現する必要があります。配慮の内容が審査書類に反映されていなければ、「問題なく働けている」と判断されてしまうリスクがあります。

3. 精神障害・発達障害での就労と受給

精神障害や発達障害のある方の場合、外見からは障害が見えにくいため、「働いているなら大丈夫では」と思われがちです。しかし実態は、多大な努力と周囲の支援があってようやく就労が成立していることも珍しくありません。

たとえば、うつ病や双極性障害、統合失調症などの精神疾患では、就労していても以下のような状況が続いているケースがあります。

  • 体調の波が激しく、月に数日以上の欠勤が発生している
  • 業務中に強い不安感や希死念慮が生じることがある
  • 帰宅後は疲弊しきって家事・入浴すら困難な状態が続いている
  • 対人関係のストレスから職場でのコミュニケーションが極めて限定的

このような状況は、「就労はしているが日常生活の能力は著しく制限されている」として評価される可能性があります。診断書の「日常生活能力の判定」欄や「就労状況」欄に、実態に即した内容が記載されているかどうかが、審査結果に大きく影響することがあります。

4. 身体障害・内部障害での就労と受給

肢体不自由や内部障害(心疾患・腎疾患・呼吸器疾患など)においても、就労しながら受給しているケースは多くあります。身体障害の場合は、障害の部位や検査数値など客観的な指標が認定基準に定められており、就労の有無よりも医学的な所見が判断の中心となりやすい側面があります。

たとえば、人工透析を受けながら週3日勤務しているケースや、心臓ペースメーカーを装着しながら軽作業に従事しているケースなどでも、受給が認められることがあります。内部障害では、検査数値や治療内容が認定基準に該当しているかどうかを正確に確認することが出発点になります。

また、就労によって体に過度な負担がかかっており、医師から就労制限の指示を受けている場合は、その旨を診断書や病歴・就労状況等申立書にしっかりと記載することが重要です。

5. 受給中に就労状況が変わった場合の注意点

障害年金を受給中に就職・転職・昇進・収入増加などの変化があった場合、更新(障害状態確認届の提出)の際に就労実態が審査に影響する可能性があります。特に精神障害・発達障害では、就労の安定性や職場での配慮状況が更新審査において参照されることがあります。

一方、就労収入が増えても、障害基礎年金・障害厚生年金には所得制限がないため(20歳前傷病による障害基礎年金を除く)、収入が一定額を超えたからといって自動的に支給が止まるわけではありません。所得制限がないという点は、多くの方が誤解しているポイントの一つです。

ただし、就労状況が改善されたことにより障害の状態が軽快したと判断され、等級の変更や支給停止となる場合もあります。受給中は自己判断せず、状況に変化があった際は専門家に相談することをお勧めします。

6. 就労実態を正確に伝えるための準備

就労しながら障害年金を申請・継続受給するうえで最も重要なのは、就労の実態と障害による制限を書類に正確に反映させることです。単に「働いている」という事実だけが伝わると、受給が困難になる可能性があります。

当事務所では、申請サポートの際に以下のような点を丁寧に確認・整理するようにしています。

  • 就労形態(障害者雇用か一般雇用か、雇用形態、勤務時間)
  • 職場での具体的な配慮内容とその経緯
  • 体調の波・休職歴・遅刻・早退の頻度
  • 就労以外の日常生活(家事・外出・対人関係など)の実態
  • 主治医が把握している就労状況と診断書の記載内容の整合性

病歴・就労状況等申立書は、本人や家族が記載できる数少ない書類であり、就労の「質」を伝える重要な機会です。就労しているという事実だけでなく、どのような状態で、どのような支えがあって就労が成立しているのかを具体的に記述することが、適正な審査につながる可能性があります。

就労中であっても障害年金の対象となる可能性は十分にあります。まずは現在の状況が受給要件を満たしているかどうかを専門家とともに確認することが、第一歩となります。

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※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。

執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)

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