傷病手当金と障害年金は両方もらえる?併給調整と返還のしくみ
「傷病手当金を受けている間に障害年金が決まったら、どちらかを返さないといけないのか」というご質問をよくいただきます。答えは、同じ病気かどうかと、受ける年金の種類によって変わります。
1. 結論:調整されるのは「同じ病気で障害厚生年金を受けるとき」です
| 状況 | 傷病手当金 |
|---|---|
| 同じ病気で障害厚生年金(+障害基礎年金)を受ける | 原則支給されない。年金の日額のほうが少なければ差額が支給される |
| 同じ病気で障害基礎年金だけを受ける | 調整なし(両方受け取れる) |
| 別の病気で障害年金を受ける | 調整なし(両方受け取れる) |
初診日に会社員などで厚生年金に入っていた方は障害厚生年金の対象になるため、多くの場合は調整を受けることになります。
2. 差額支給の計算方法
障害厚生年金(同じ病気で障害基礎年金も受ける場合はその合計)の年額を360で割った額を「年金の日額」とし、傷病手当金の日額と比べます。
計算例(金額は説明のための仮の数字です)
- 傷病手当金の日額:6,000円
- 障害厚生年金3級の年額:72万円 → 年金の日額 2,000円(72万円÷360)
- 傷病手当金として支給される額:6,000円−2,000円=1日あたり4,000円
調整があっても、受け取る合計額は傷病手当金だけを受けていたときより減りません。年金と、差額の傷病手当金を合わせて、もとの傷病手当金の日額と同じになるしくみです。
3. さかのぼって年金が決まったときの返還
障害認定日にさかのぼって請求(認定日請求)し、過去の分の障害厚生年金がまとめて支給されると、傷病手当金と重なっていた期間について、健康保険から傷病手当金の返還を求められることがあります。
返還を求められるのは、重なった期間の「年金の日額」に当たる分です。年金の過去分がまとめて振り込まれるので、損をするわけではありませんが、振り込まれた年金の一部を返すことになると知っておくと、慌てずに済みます。年金の振込額をすべて使ってしまわないよう注意してください。
4. 障害手当金(一時金)を受けるときの調整
障害厚生年金の3級より軽い障害で、一時金の障害手当金を受ける場合も調整があります。この場合は、受け取った傷病手当金の合計が障害手当金の額に達するまで、傷病手当金は支給されません。
5. 調整があっても障害年金を申請したほうがよい理由
- 傷病手当金は通算1年6か月で終わる:障害年金は、等級に該当する限り続きます。
- 障害認定日の診断書は後から取りにくい:時間がたつと、当時の状態を書いた診断書を取るのが難しくなります。
- 手続きの順番を整理できる:健康保険には年金を受けることになった旨を届け出る必要があります。早めに見通しを立てておくと、返還の手続きも落ち着いて進められます。
傷病手当金から障害年金へ切り替える全体の流れは、傷病手当金が終わったら障害年金へで解説しています。
よくある質問
- Q. 障害基礎年金だけなら、傷病手当金と両方受け取れますか?
- 受け取れます。傷病手当金と調整されるのは、同じ病気で障害厚生年金を受けるときです。障害基礎年金だけを受ける場合は調整されません。
- Q. 傷病手当金を返すことになったら、損をしますか?
- 損にはなりません。重なった期間は、年金と差額の傷病手当金を合わせて、もとの傷病手当金の日額と同じになるよう調整されます。ただし、まとめて振り込まれた年金の一部を返す形になるため、使い切らないよう注意が必要です。
- Q. 調整されるなら、傷病手当金が終わってから障害年金を申請しても同じですか?
- 同じとは限りません。障害認定日の頃の診断書が取れなくなると、さかのぼって受け取れる範囲が狭くなることがあります。調整があっても、早めに準備を始めることをおすすめします。
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傷病手当金の支給状況、障害認定日、請求の方法から、いつ・いくら受け取れそうかを一緒に確認します。
※本記事は2026年10月時点の制度に基づく一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。
執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)