COLUMN · 2026.04.14

肢体不自由の障害年金|関節可動域と日常生活動作の評価ポイント

肢体不自由による障害年金の申請では、「どの程度動かせるか」という身体機能の数値だけでなく、「実際の生活でどこまでできるか」という日常生活動作(ADL)の状況が審査において重要な意味を持ちます。当事務所には、関節の可動域制限や麻痺を抱えながらも申請をためらっていた方から多くのご相談をいただきます。本稿では、関節可動域とADLが障害年金の審査においてどのように評価されるかについて、実務上の観点から整理してご説明します。

1. 肢体不自由と障害年金の基本的な関係

障害年金における「肢体の障害」とは、上肢・下肢・体幹・脊柱の機能障害を広く含む概念です。原因疾患としては、脳梗塞・脳出血などの脳血管疾患による片麻痺、変形性関節症や関節リウマチによる関節機能障害、脊髄損傷、骨折後の後遺障害、筋ジストロフィーなど多岐にわたります。

審査の基準となるのは、国民年金・厚生年金保険の障害認定基準です。肢体の障害については、主に「上肢の障害」「下肢の障害」「体幹・脊柱の障害」「肢体の機能の障害」という区分ごとに、1級・2級・3級(厚生年金のみ)の認定要件が定められています。この認定基準のなかで、関節可動域は客観的な指標として特に重視されます。

2. 関節可動域(ROM)が審査で果たす役割

関節可動域(Range of Motion、以下ROM)とは、関節が動く角度の範囲を指します。障害認定基準では、上肢・下肢の各関節について、健側(または参考可動域角度)と比較した制限の程度によって機能障害の等級が判定される仕組みになっています。

たとえば上肢の機能障害では、肩関節・肘関節・手関節などの主要な関節ごとに可動域が計測され、おおむね以下のような考え方で評価が行われます。

  • 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている場合、「関節の機能に著しい障害を有するもの」に該当する可能性があります
  • 可動域が4分の3以下に制限されている場合は、「関節の機能に障害を有するもの」として評価される可能性があります
  • 複数の関節に障害がある場合は、それぞれの状態を総合的に判断することがあります

ただし、ROMの数値はあくまでも評価の一要素です。測定値が等級の境界付近にある場合や、数値では表れにくい疼痛・筋力低下・巧緻性の低下がある場合には、後述するADLの評価が審査結果を左右することがあります。

3. 日常生活動作(ADL)の評価と診断書への反映

障害年金の審査では、日常生活動作(Activities of Daily Living、以下ADL)の状況が極めて重要な判断材料となります。ADLとは、食事・入浴・更衣・排泄・移動など、日常生活を営むうえで必要な基本的動作の総称です。

診断書(様式第120号の3「肢体の障害用」)には、ADLに関する具体的な記載欄が設けられています。「一人でできる」「一人でできるが非常に不自由」「一人でできるが補助具が必要」「一人でできない」といった段階で各動作の状況を記載する形式になっており、この記載内容が等級判定に直接影響します。

当事務所の経験上、ROMの数値だけでは等級に届かないと思われるケースでも、ADLの制限が適切に記載されることで認定につながることがあります。逆に、ROMが基準値を満たしていても、ADLの記載が実態より軽く書かれてしまうと、実際の生活の困難さが審査に伝わらないリスクがあります。

4. 診断書作成における注意点

障害年金の審査は書面審査が原則です。申請者が実際にどれほど生活に困難を抱えているかは、提出された診断書と申立書の内容によってのみ判断されます。そのため、診断書の記載内容を実態に即したものにすることが非常に重要です。

医師は診察室での状態を中心に記載する傾向があるため、生活場面での困難さが十分に伝わっていないことがあります。当事務所では、受診時に日常生活の状況を医師に具体的に伝えるよう助言することがあります。たとえば以下のような情報を整理して医師に伝えることが、適切な診断書作成に役立つことがあります。

  • 着替えや洗髪など身の回りの動作にかかる時間や補助の必要性
  • 階段の昇降や屋外での移動における具体的な制限
  • 箸の使用・文字を書く・ボタンをはめるなどの手指の巧緻動作の状況
  • 疼痛による活動制限や休憩の頻度
  • 補装具・杖・車椅子などの使用状況

また、診断書と合わせて提出する「病歴・就労状況等申立書」においても、ROMの数値では表現しきれない生活上の支障を具体的かつ客観的に記載することが求められます。

5. 等級の目安と「肢体の機能の障害」の総合評価

肢体の障害では、単一の関節・部位だけでなく、複数の部位に障害がある場合に「肢体の機能の障害」として総合的に評価される仕組みがあります。たとえば上肢と下肢の両方に障害がある場合や、麻痺と関節拘縮が組み合わさっている場合などは、それぞれの障害を個別に評価した等級より上位の等級で認定される可能性があります。

おおまかな目安として、障害認定基準では以下のような状態が各等級の例示として挙げられています(あくまで参考であり、個別の事情によって判断が異なることがあります)。

  • 1級:一上肢および一下肢の機能に著しい障害を有するもの、または四肢の機能に相当程度の障害を残すものなど、日常生活に他者の介助が必要な状態
  • 2級:一上肢または一下肢の機能に著しい障害を有するもの、または両下肢の機能に著しい障害を有するものなど、日常生活が著しく制限される状態
  • 3級(厚生年金のみ):一上肢または一下肢の機能に相当程度の障害を残すものなど、労働が制限される状態

等級の境界は明確に線引きできるものではなく、ROMの数値・ADLの状況・疼痛の程度・補助具の使用状況などを総合した判断が行われます。そのため、自己判断で「等級に届かない」と結論づけることは慎重であるべきだと当事務所では考えています。

6. 申請前に確認しておきたいこと

肢体不自由による障害年金の申請を検討されている方は、まず以下の点を整理しておくと手続きがスムーズになることがあります。

  • 初診日の特定:障害の原因となった傷病で初めて医療機関を受診した日を確認する。初診日によって、申請できる年金の種類(国民年金・厚生年金)が決まります
  • 保険料の納付要件:初診日の前日時点で、一定の保険料納付実績があるかを確認する
  • 現在の主治医との関係性:診断書作成を依頼する主治医が、日常生活の実態を把握しているかどうかを確認する
  • 障害認定日の確認:原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となりますが、例外もあります(人工関節置換術後など)

肢体の障害は、症状が変動したり、複数の疾患が絡み合ったりすることが多く、申請における論点も多岐にわたります。関節可動域の数値をどのように評価に結びつけるか、ADLの実態をどのように書面に落とし込むか、こうした点は専門的な知識と経験が必要な領域です。当事務所では、大阪を中心に肢体不自由による障害年金の相談・申請支援を行っており、個々の状況に応じた対応を心がけています。

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※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。

執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)

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