COLUMN · 2026.05.13

障害年金と老齢年金の併給・選択|65歳到達時の判断ポイント

障害年金を受給している方が65歳を迎えると、老齢年金との関係について改めて検討が必要になります。「これまで通り障害年金だけ受け取ればよいのか」「老齢年金に切り替えた方が得なのか」「そもそも両方もらえるのか」といったご質問を、当事務所にも多くいただきます。この記事では、65歳到達時の年金の選択・併給に関するルールと判断の考え方を整理してお伝えします。

障害年金と老齢年金の組み合わせ早見表

以下は、障害年金と老齢年金の関係を整理した表です。それぞれの受給権があることが前提で、表の「可能」は受給権が自動的に発生するという意味ではありません。遺族年金など別の給付も受けられる方は、その年金も含めて確認します。

表が画面に収まらない場合は左右にスクロールできます。キーボードでは表を選んで左右の矢印キーで移動できます。

年齢別・障害年金と老齢年金の併給
組み合わせ65歳未満65歳以上
障害基礎年金+障害厚生年金同じ支給事由なら可能同じ支給事由なら可能
障害基礎年金+老齢厚生年金原則、同時には受け取れない同時に受け取る選択が可能
老齢基礎年金+老齢厚生年金繰上げ等の受給要件を満たす場合に限る両方の受給権があれば可能
障害基礎年金+老齢基礎年金同時には受け取れないどちらかを選択
障害厚生年金+老齢厚生年金同時には受け取れないどちらかを選択
老齢基礎年金+障害厚生年金原則、同時には受け取れないこの組み合わせでの併給はできない

65歳以上で障害基礎年金と障害厚生年金を受けている方は、「障害基礎+障害厚生」「障害基礎+老齢厚生」「老齢基礎+老齢厚生」のうち、受給権のある組み合わせを比較します。3級の障害厚生年金のみを受けている方に、障害基礎年金が自動的に加わるわけではありません。

組み合わせの資料:日本年金機構・障害年金と老齢年金の選択2つ以上の年金を受ける権利ができたとき

1. 65歳未満と65歳以降では、ルールが大きく異なる

まず前提として、65歳未満の段階では、障害年金と老齢年金は原則として同時に受け取ることができません。これを「併給禁止の原則」といいます。65歳未満で老齢厚生年金の繰上げ受給を選択している場合も、障害年金との同時受給は認められていません。

一方、65歳以降については、法改正(2006年4月施行)により一定の範囲で併給が認められるようになりました。ただし「65歳になれば何でも組み合わせられる」というわけではなく、年金の種類によって受け取れる組み合わせが異なります。この点を正確に把握しておくことが、受給設計の第一歩となります。

2. 65歳以降に認められる「併給」の組み合わせ

65歳以降に同時受給が認められる主な組み合わせは以下のとおりです。

  • 障害基礎年金+老齢厚生年金(同時受給が可能)
  • 障害基礎年金+障害厚生年金(従来通りの組み合わせ)

一方、以下の組み合わせは65歳以降も認められていません。

  • 障害基礎年金+老齢基礎年金(どちらか一方を選択)
  • 障害厚生年金+老齢厚生年金(どちらか一方を選択)

実務上、特に注目されるのが「障害基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせです。現役時代に厚生年金に加入していた期間が長い方ほど、この組み合わせが経済的に有利になる可能性があります。障害等級が1級または2級であり、かつ老齢厚生年金の受給権がある場合には、この選択肢を真剣に検討する価値があります。

3. 「選択」が必要になる場面と手続きの流れ

65歳になると、日本年金機構から「年金受給選択申出書」の案内が届くことがあります。これは、自分がどの年金をどのように受け取るかを正式に申し出るための書類です。

手続きの流れとしては、概ね以下のようになります。

  • 65歳到達の数か月前に日本年金機構からお知らせが届く
  • 受給できる年金の種類・金額を確認する
  • 「年金受給選択申出書」を提出し、希望する受給方法を申し出る
  • 選択した内容に基づいて年金が支給開始される

なお、一度選択した後でも、将来的に受給する年金の種類を変更することは可能です。ただし、変更の効力が生じるのは申出月の翌月からとなるケースが一般的であり、過去に遡って変更することは基本的にできません。そのため、最初の選択をなるべく有利な形で行うことが重要になります。

4. どちらが有利かを判断する際の主な視点

障害年金と老齢年金のどちらを選択するか、あるいは併給を活用するかは、個々の状況によって異なります。一概に「どちらが得」とは言えませんが、判断の際に考慮すべき主な要素を整理します。

  • 障害等級:障害基礎年金は1級・2級のみ支給されるため、等級によって選択肢が異なります
  • 厚生年金の加入期間・報酬額:老齢厚生年金の額は加入期間と標準報酬月額に依存するため、長く厚生年金に加入していた方ほど老齢厚生年金が高額になる傾向があります
  • 加給年金・振替加算の有無:老齢厚生年金には配偶者に対する加給年金が加算される場合があり、これが受給額に影響することがあります
  • 税・社会保険への影響:受給する年金の種類や金額によって、住民税や国民健康保険料が変動することがあります

単純に年金額だけを比較するのではなく、税や保険料も含めた手取りベースで試算することが、より実態に即した判断につながります。

5. 障害厚生年金を受給している場合の注意点

障害厚生年金(1級または2級)を受給されている方が65歳を迎えた場合は、選択の構造が少し複雑になります。老齢年金との関係で考えると、以下のような選択肢が生じることがあります。

  • 障害基礎年金+障害厚生年金(従来通りの組み合わせを継続)
  • 障害基礎年金+老齢厚生年金(65歳以降の新たな選択肢)
  • 老齢基礎年金+老齢厚生年金(老齢年金のみに切り替える)

障害厚生年金と老齢厚生年金のどちらが高いかは、個人の加入記録によって異なります。障害認定日が比較的若い時期であれば障害厚生年金の方が高くなることもありますし、長期間にわたって高い報酬で厚生年金に加入してきた方は老齢厚生年金の方が高くなる場合もあります。どちらが有利かは、年金事務所での照会や専門家への相談を通じて確認されることをお勧めします。

6. 65歳到達前に準備しておきたいこと

選択する前に、年金額・加算・手取りを確認する

  1. 受けられる年金を並べる:年金証書、年金額改定通知書、老齢年金の請求案内・見込額を用意し、種類と等級を確認します。
  2. 同じ期間の年額で比べる:障害基礎・障害厚生・老齢基礎・老齢厚生を分け、加給年金や子の加算、支給停止を含めた見込額を確認します。
  3. 税・保険料の資料を添える:他の所得、住民税や健康保険料の通知、家族の扶養状況を用意します。非課税の障害年金と課税対象の老齢年金を分けて見ます。
  4. 選択の手続きを確認する:どの書類をいつ提出するか、どの月から選択内容が反映されるかを年金事務所で確認します。支給予定も合わせて聞いておきます。

比較する金額がそろわない段階では、年金額だけから有利不利を決めず、不足している資料を確認しましょう。税金の扱いは障害年金の非課税・確定申告、家族の加算は子の加算・配偶者加給年金で整理できます。

65歳到達時に慌てないよう、事前に準備しておくべき事項があります。当事務所では、以下のような確認を早めに行うことをお伝えしています。

  • 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で年金加入記録を確認する:記録漏れや標準報酬月額の誤りがないか点検しておくことが重要です
  • 障害年金の受給状況を整理する:現在受給している障害年金の種類・等級・支給額を把握しておく
  • 老齢年金の見込み額を確認する:年金事務所での「年金見込額照会」を活用すると、具体的な数字で比較検討ができます
  • 繰上げ受給を検討している場合は特に注意する:老齢年金を繰り上げると、障害年金の受給に影響が生じる場合があるため、慎重な判断が必要です

65歳という節目は、障害年金の受給者にとって年金戦略を見直す重要な機会です。単に「今まで通り」を選ぶのではなく、受給できる全ての選択肢を把握した上で、ご自身の状況に合った判断をしていただくことが大切です。当事務所では、障害年金の申請支援だけでなく、65歳到達時の年金選択に関するご相談にも対応しております。お気軽にご連絡ください。

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初回相談は無料です。新規申請は着手金0円の完全成功報酬制で、全国からご相談を承っております。不支給や等級への不服がある場合は、通知書・期限・提出済み書類・再申請との違いを分けて確認できます。


※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。

執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)

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