障害基礎年金と障害厚生年金の違い・併給について
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、どちらが受給できるか、あるいは両方を受給できるかは、初診日に加入していた年金制度によって決まります。制度の仕組みを正しく理解することは、受給漏れを防ぐうえで非常に重要です。当事務所では日々多くのご相談をお受けするなかで、この違いを混同されている方が少なくないと感じています。本稿では、両制度の基本的な構造から等級区分、障害手当金まで整理してご説明します。
1. 障害基礎年金と障害厚生年金はどう違うのか
障害年金制度の根幹は、「初診日時点でどの公的年金に加入していたか」という点にあります。初診日とは、障害の原因となった傷病について初めて医師の診察を受けた日を指します。
初診日において国民年金に加入していた方(自営業者・学生・無職の方など)は、障害基礎年金の対象となります。一方、初診日において厚生年金に加入していた方(会社員・公務員など)は、障害厚生年金の対象となります。
重要なのは、厚生年金加入者が障害等級1級または2級に該当する場合、障害厚生年金に加えて障害基礎年金も同時に受給できる点です。これを「併給」といいます。つまり、会社員として勤務中に初診日がある方が重い障害を負った場合は、両制度から給付を受けられる可能性があります。
2. 障害基礎年金の概要と支給額
障害基礎年金は、1級と2級の2段階に区分されています。3級は存在せず、2級に満たない場合は不支給となります。
令和6年度の年金額(新規裁定者)を参考にすると、以下のとおりです。
- 1級:1,020,000円(年額)+子の加算
- 2級:816,000円(年額)+子の加算
1級の年金額は2級の1.25倍と定められています。また、受給権者に18歳到達年度末までの子(一定の障害がある場合は20歳未満)がいる場合は、子の加算が上乗せされます。なお、年金額は毎年度改定されるため、最新額は日本年金機構の公表資料でご確認ください。
障害基礎年金を受給するためには、保険料の納付要件も満たす必要があります。原則として、初診日の前日時点で、初診日が属する月の2か月前までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間について保険料が納付または免除されていることが求められます。特例として、初診日が令和8年3月末日以前であれば、直近1年間に未納がないことで要件を満たせる場合もあります。
3. 障害厚生年金の等級区分(1級・2級・3級)
障害厚生年金は、1級・2級・3級の3段階に区分されており、障害基礎年金より受給できる等級の幅が広い点が特徴です。
- 1級・2級:障害基礎年金と併せて受給できます。障害厚生年金の額は、在職中の報酬や加入期間をもとに計算した「報酬比例部分」が基本となり、これに配偶者加給年金額が加算される場合もあります。
- 3級:障害基礎年金との併給はなく、障害厚生年金のみ受給します。3級には最低保障額が設けられており、報酬比例部分の計算結果が最低保障額を下回る場合は、最低保障額が支給されます。令和6年度の最低保障額は612,000円(年額)です。
1級・2級に該当する場合の障害厚生年金額は、報酬比例部分の計算に加え、被保険者期間が300月(25年)に満たない場合は300月とみなして計算される最低保障の仕組みがあります。これにより、短期間しか厚生年金に加入していなかった方でも一定額が保障されます。
4. 障害手当金とはどのような制度か
障害厚生年金の周辺制度として、障害手当金があります。これは年金ではなく、一時金(一括払い)として支給される給付です。
障害手当金の対象となるのは、傷病が初診日から5年以内に治癒(症状が固定)し、かつその時点での障害の程度が障害厚生年金3級より軽い一定の障害状態にある場合です。「治癒」とは必ずしも完治を意味するわけではなく、症状が安定して固定した状態も含みます。
支給額は、報酬比例部分の計算額の2年分相当であり、最低保障額も設定されています。ただし、同一の傷病について労働基準法の規定による障害補償を受ける権利がある場合は、6年間は支給が停止される点に注意が必要です。
障害手当金は要件が複雑であり、対象となるかどうかの判断が難しいケースもあります。少しでも疑問がある場合は、専門家に確認することをお勧めします。
5. 併給の仕組みと注意点
前述のとおり、厚生年金加入中に初診日がある方が障害等級1級または2級に認定された場合、障害基礎年金と障害厚生年金を同時に受給できます。この場合の受給総額は、両者の合算となるため、国民年金のみ加入者と比較して給付水準が高くなる傾向があります。
一方で、障害厚生年金3級のみの認定となった場合は、障害基礎年金は受給できません。また、障害手当金を受給した場合も、障害基礎年金との合算支給はありません。
なお、老齢年金や遺族年金との関係では、一人の方が複数の年金を同時に受給できる場合と、どちらか一方を選択しなければならない場合があります。年金の選択は将来の受給額に影響することがあるため、慎重に検討する必要があります。
6. どちらの年金制度に該当するか確認する重要性
障害年金の申請において、初診日の特定は最も重要な手続きの一つです。初診日が国民年金加入期間中なのか、厚生年金加入期間中なのかによって、受給できる年金の種類・金額・等級区分がすべて変わります。
特に、転職や退職のタイミングと初診日が重なる場合や、複数の傷病が関連している場合は、どの日を初診日とするかの判断が複雑になることがあります。また、20歳前に初診日がある場合は、20歳前傷病による障害基礎年金という別の制度が適用されるため、注意が必要です。
当事務所では、初診日の調査から始まり、診断書の取得支援、申請書類の作成まで、一貫してサポートしています。制度の複雑さゆえに申請をためらっている方や、どちらの制度に該当するか判断がつかない方は、まず専門家への相談を検討されることをお勧めします。
※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。
執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)