COLUMN · 2026.05.13

海外居住中でも障害年金は受給できる? 海外送金・在留届の手続きと注意点

「海外に移住したら障害年金はどうなるのか」というご相談を、当事務所にも一定数いただきます。結論から申し上げると、国籍・居住地を問わず、要件を満たせば障害年金を受給できる可能性があります。ただし、国内在住の場合とは異なる手続きが必要であり、届出を怠ると受給が停止されることもあります。本記事では、海外居住中の障害年金受給に関する基本的なルールと実務上の注意点を整理します。

1. 海外居住と障害年金の基本的な考え方

日本の障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)は、住所が国外にある場合でも受給権は消滅しません。年金制度は「国内居住要件」を受給条件としていないため、海外に転出した後も引き続き受け取ることが可能です。

ただし、これはあくまで「受給権が維持される」という意味であり、実際に年金を受け取り続けるためには、日本年金機構への各種届出や手続きを適切に行うことが前提となります。手続きを怠った場合、支払いが一時停止されたり、遡及して返還を求められたりする可能性がありますので、注意が必要です。

2. 海外転出時に必要な届出:在留届と住所変更の手続き

海外に居住する場合、年金に関連して必要となる主な届出は以下のとおりです。

  • 市区町村への転出届:日本の住民票を抜く手続きです。これにより国民年金第1号被保険者の資格は喪失しますが、既に受給権を取得している障害年金には直接影響しません。
  • 日本年金機構への住所変更届:年金受給者は、住所が変わった場合に速やかに届け出る義務があります。海外住所への変更も同様です。
  • 在留届(外務省への届出):海外に3か月以上居住する場合、外務省の在外公館(大使館・領事館)または「在留届電子届出システム(ORRnet)」を通じて在留届を提出します。これは年金とは直接連動する手続きではありませんが、現況届や各種証明書の取得に際して、在留届の提出が事実上の前提となる場合があります

在留届は義務であるとともに、緊急時の連絡先として機能するものでもあります。提出していない場合、領事館での証明書発行手続きがスムーズに進まないことがありますので、早めに対応することをお勧めします。

3. 年金の受け取り方:海外への送金手続き

障害年金を海外の金融機関口座で受け取るためには、「海外送金」の手続きを日本年金機構に申し出る必要があります。国内の銀行口座を維持したまま引き続きそちらで受け取ることも選択肢の一つですが、口座管理の観点から、現地口座への送金を希望する方も少なくありません。

海外送金を希望する場合の主な手続きは以下のとおりです。

  • 「年金受取機関変更届」の提出(日本年金機構所定の用紙を使用)
  • 送金先の金融機関情報(SWIFT/BICコード、口座番号など)の記載
  • 送金手数料は受給者の負担となる場合があります

なお、国によっては日本との社会保障協定が締結されており、年金の取り扱いに特例が設けられているケースがあります。現在、日本はドイツ・アメリカ・韓国・オーストラリアなど多くの国と協定を締結しています。居住する国との協定内容によっては、手続きや受給条件に影響が生じる可能性がありますので、個別に確認することが重要です。

4. 現況届の提出:受給継続のために欠かせない手続き

障害年金の受給者は、原則として誕生月に「現況届(生存確認)」を提出する義務があります。これは受給者が引き続き生存していること、および受給要件を満たしていることを確認するための届出です。

海外居住中の場合、現況届には在外公館(大使館・領事館)が発行する「在留証明」または「署名(サイン)証明」などの書類を添付することが求められる場合があります。これらの証明書を取得するためには、事前に在留届を提出しておくことが実務上ほぼ必須となっています。

現況届の未提出が続いた場合、年金の支払いが差し止められる可能性があります。海外では郵便事情や行政手続きに時間を要することもありますので、誕生月の数週間前には準備を開始することが望ましいといえます。

5. 受給を左右する可能性がある注意点

海外居住中の障害年金受給にあたっては、以下の点にも注意が必要です。

  • 障害状態の変化による支給停止・額改定:障害年金は、障害の程度が変化した場合に支給停止や額の改定が行われることがあります。海外在住であっても、定期的な診断書の提出が求められる場合があり、これを怠ると不利益を受ける可能性があります。
  • 租税条約による課税関係:年金所得に対する課税は、居住する国との租税条約の内容によって異なります。現地で課税される可能性もありますので、税務上の取り扱いについては専門家への確認をお勧めします。
  • 受給権の確認と定期連絡:日本年金機構からの通知は、登録した海外住所に届きます。住所変更の際は速やかに更新しないと、重要な通知を見逃してしまう可能性があります。

6. 海外居住中の障害年金手続きで困ったときは

海外居住中の障害年金手続きは、国内の手続きと比較して複雑になりやすく、言語の壁や時差の問題も重なるため、手続きが滞りがちになることがあります。当事務所では、現在海外在住の方や、海外転居を検討されている受給者の方からのご相談にも対応しております。

特に、初めて障害年金を申請する段階で既に海外に居住している方については、国内在住の場合とは異なる書類収集の手順が必要となる場合があります。申請前の段階からご相談いただくことで、手続きの見通しを立てやすくなる可能性があります。

障害年金は、受給できる可能性があるにもかかわらず、手続きの複雑さから申請を諦めてしまうケースが少なくありません。海外居住という事情があっても、まずは専門家に相談することをお勧めします。

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※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。個別の申請可否・受給可能性は個別事情により異なります。

執筆:東亮介(社会保険労務士/社労士登録番号 第27130052号)

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